一方、男たちは、頭から被る白いワンピースのアラブ服にジャンビーヤと呼ばれる三日月刀を腰のベルトに差したいでたちで、スカーフを頭にぐるりと巻きつけている。ここまではアラブっぽいのだが、なぜかこのいでたちに背広の上着を羽織っている。この不釣合いな組み合わせがかっこいいのだろうか?男たちは、日射しが強くて歩くのもいやになるような昼ごろから、何やらほっぺたにピンポン玉でも入れたように膨らませてくちゃくちゃ口の中でいわせながら、道端やら部屋の中やらで座ってくっちゃべっている。

 口の中に入れているのはカートと呼ばれる摘みたて緑の葉っぱで、ドラッグの一種らしい。道で歩いていても呼び止められてこのカートを勧められる。カーペット屋へ連れ込まれても、おやじはカーペットを勧めずにカートを勧める。どうやらこのカートをみんなで噛むことが社交的な意味を持つようで、宿の最上階の部屋でも7、8人の男たちがカートの葉を柔らかい絨毯の上に撒き散らしながらくっちゃべっていた。ともかく、勧められるまま見よう見真似で噛んでみた。
「ふむふむ、あーやってほっぺたのところに溜めてくちゃくちゃすんねんな。」
「あー、どもども、もっといっぱい噛めって?」
 くちゃくちゃ・・・
「あー、唾がいっぱい出るわ。」・・・
「ん?唾と一緒に葉っぱも少しずつ飲み込んでる気がすんなー。」
・・・ごくっ・・・?
「おもっきりドラッグ全部喰ってもーたっ・・・!」
 結局、カートを噛んでどーなるかはわからずじまいだった。ただ、確かなことは喰っても体は壊さないということだけ。

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