そして夜灯りの乏しい旧市街を歩くと、昼間土色だった建物の四角な黒い輪郭の中に黄、赤、緑、青の色の光を放つガラスが、うっすら光を反射する漆喰とともに浮かび上がる。スーク(市場)では夜も灯りが燈っていて、色とりどりのスパイスや、ピカピカであまり切れそうのない派手なジャンビーヤや、一見古そうに見える怪しげな銀製品が通りに並んでいる。渡航延期勧告とは裏腹にサナア旧市街では夜も人々が身構えることもなく散歩する平和な通りに見える。



 この世界遺産の街を歩いていてもほとんど観光客と擦れ違わない。どうやら、ニューヨークのテロ事件以来ヨーロッパからの観光客が激減したらしい。それ以前からアメリカ駆逐艦爆破事件や外国人誘拐事件が発生しているお国柄である。日本人なんてニューヨークのテロ事件の前でもイエメンを訪れた人は少ない。

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