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アラブで最も貧しい国(2002年にイエメンを訪れたときの旅行記です)
バスから降りたタハリール広場から宿までの道では、アラブ最貧国とはいえ、いびつなトマトや人の親指ほどの人参、不揃いなじゃがいもで道端が埋めつくされていた。そして、荒涼とした殺風景な乾燥帯の地は、雨が降ったときだけ川となるワジの橋を渡ったところから一変する。土色の日干し煉瓦が高く積み上げられた5〜8階建ての建物に、四角い窓とその上に半円型、釣鐘型といった採光窓が嵌め込まれ、その窓や建物の縁を乾燥した高地の強い陽射しを真っ白に照り返す漆喰が浮き立たせている。さらには、屋上や窓の下にも幾何学的な模様が付けられた白い装飾のラインが引かれているものもある。このような独特の様式の背の高い建物が、城壁に囲まれたエリアに迷路のような石畳の路地を挟んで密集している。この城壁に囲まれた建築物群こそ、人が住む街全体が世界遺産登録されているサナア旧市街。これらの建物は築400年のものもあるらしく、その様式は1000年前と変わらないのだそうだ。 泊まった宿Golden Daar Tourist Hotel は、旧市街でも最も高い建物の一つのようだ。部屋の窓からは、乾いた山の手前に広がる漆喰に飾られた土色の建物の群れの中に、てっぺんの色が剥げてきた白いドーム型のモスクやミナレットが浮かんでいるのが見える。さらに、最上階には、柔らかい絨毯の上にアラブ式の角張った高さの低い重厚な赤いソファーが広い部屋の壁にびっしりと並べられ、シャンデリアとともに吊るされたガラス製の風鈴がチリチリと鳴っていて、まるでイエメンの金持ちにでもなったような気分にさせてくれる。ただし、見晴らしのいい部屋と引き換えに2000mを越え酸素の薄い高地にあるサナアで7階までの階段を上り下りすることになるのだが・・・。 |
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(C) Tabinchu Terada |