「チキンorフィッシュ?」
 夜中の3時に聞かれても喰えまへんで。
 ドバイ深夜二時発サナア早朝4時着なんて寝る時間ない。時差を含めて貴重な3時間を大切に使おうとようやく眠りについたころ、
 「あっらぁぁ・・・ぁぁ〜ふあくばっあっらぁぁ・・・・」
 耳元でけたたましいイスラムの義務を喚起するアザーンの響きが・・・・。後ろの席のおっさんが小便に行くときに、オレのシートにイヤホンを引っ掛けて行きやがったのだ。飛行機の音声チャンネルにアザーンが流れるとは。イスラムワールドの始まりである。

 定刻に、飛行機は灯りの乏しい空港に滑り降り、機械化の著しく遅れたイミグレーションで延々待たされたあと、ようやくアラブ最貧国のイエメンに入国できた。・・・と思ったら、別室に連れて行かれた。そこには、同じく日本人のU氏がいた。そこの入国係官曰く、
「個人旅行者は入国できない!」
・・・寝耳に水である。
「ちゃんと在日イエメン大使館がビザくれてるやん!」
 と、もちろん喰い下がる。問答の末、日本大使館の現地人と電話がつながり、事情を説明。その2時間後、日本人大使館員と電話で話すと、
 「米軍がイエメンでアルカイダ掃討作戦を展開しているこの時期、パキスタン・イランに入国歴のある人は要注意人物になってるんですよ。外務省のホームページに出してますけど・・・。」
 とのこと。
「そんなもん見てへんわい!」
 怪しい二人の日本人旅行者は共感し合っていた。U氏はパキスタンの入国歴があるらしい。オレなんて両方とも1ページ埋めるシール型ビザ貼ってある・・・。なんとか、日本大使館がアラビア語の身元保証FAXを空港に送ってくれ一件落着となった。

 このようなマイナートラブル(?)のあと、すっかり夜が明けきった空港の外に出ると、そこには荒涼とした大地が広がっていた。空港からサナアの街までのバスの窓から見えるのは、木の生えていないベージュの山々に囲まれたねずみ色のアスファルトの道と、その道端にある土色の飾り気のない四角い建物、そして道往く白いアラビア服の男と黒いチャドルの女たちだけの色彩の乏しいアラブの地。その色彩の乏しいアラブの地と透き通った鮮かな水色を放つ空とのコントラスト。異国情緒満載の光景。高まる期待。

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