漠野(ばくや)独行の難

 身体を休めてまた進んだはいいものの、こんどは野馬に出くわした羊が広原を逃げ回り、一疋の羊の荷物の片っ方がどっかへ落ちたか失くなっていました。その中に何が入れてあるかというと時計、磁石、インド銀が四、五十ルピー、それから食物を喰う椀、乾葡萄、西洋小間物の人に遣って珍しがるような物も大分入れてありました。そこで慧海はこう考えました。
「こりゃもはやマナサルワ湖に近づいて人に逢うことも近くなったのであろう。それにこういう西洋物を持って居ては人から疑いを受けて奇(き)禍(か)を買うようになるから仏陀がわざとこういう物を失わせるようにされたかも知れない。」

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